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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)2139号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、本件交通事故の発生および事故の態様

<証拠>を綜合すると、

(一) 昭和四三年三月五日午前四時ごろ、豊中市服部本町三丁目一番地先路上において、原告田中運転の被害車が訴外常石博道運転の事故車に接触し、被害車は歩道に乗り上り街路灯に衝突して大破し、原告田中が受傷したこと。

(二) 本件事故現場は直線で南北に通ずる二級国道一七六号線の道路上で車道の幅員は約一一メートル、その中央は中心線が引かれ路面はアスファルト舗装がなされており、両側には車道より若干高く、なつている幅員三メートルの歩道があり、東側歩道には、車道寄に一定間隔をおいて水銀灯が設置されているので夜間でも前方の見通しは良好であり、最高速度は四〇キロメートルに規制されている。しかして事故現場は通常は諸車の通行がひんぱんであるが、事故当時は早朝のため交通量は少くまた降雨中で路面がぬれていたこと。

(三) 常石は事故車を運転して右事故現場附近を時速約七〇キロメートルでセンターライン寄りを南進中、進路約一〇メートル前方左側に乗客らしい人影をみとめたので、これを乗車させようとして、後続車の有無等後方の安全を十分に確かめないまま、ブレーキを踏み、左折の合図をすると同時にハンドルを左に切つた直後、左後方約五メートルのところを同方向に同速度で進行してくる原告田中運転の被害車を発見し、これとの衝突をさけるためハンドルを右にもどそうとしたが間に合わず事故車の左側部と被害車の右前部が接触するに至つたこと。

(四) 原告田中は被害車を運転し常石運転の事故車の左後方約五メートルの歩道寄りを南進中、前記のように事故車が進路を左に変えて減速したので危険を感じて急ブレーキを踏むと同時にハンドルを左に切つたところ、衝突を免れ軽い接触ですんだものの被害車は不規旋転の状態(制動輪がロックされ、スリップを起こしてハンドルを切り返しても操縦の自由が効かない状態)となり、操把の安定を失つて左側車輪が前記東側歩道に乗り上げそのまま数メートル進行して歩道上の水銀灯に衝突してようやく停止したこと。

以上の事実が認められ、前掲証拠のうち右認定に反する部分は措信しがたく、他に右認定に反する証拠はない。

右認定事実によると、本件事故の発生については原告田中のスピードの出しすぎならびにハンドルおよびブレーキ操作の不適当がその一因をなしているけれども、常石があらかじめ三〇メートル手前で左転把の合図をすることなく事故車の進路を急に左方に変えたこともその原因となつていると言わざるを得ない。

ちなみに、原告らは本件事故の態様について、先行の被害車が乗客を認めて停車しようとしていたところ、右後方から右乗客を先取りしようとして追い上げてきた事故車が被害車を追越した後、被害車の直前を左に切り込もうとした際に接触したものであると主張し、甲第一七、第一九号証および原告田中本人尋問の結果中には右主張にそう部分があるが、前示認定の事実および一般的にみて、相当なスピードで走つている先行車を追越したうえ右のような切り込みをすることは、そのまま同スピードで進行し続けるのならともかく、前方にいる客を乗車させるためには当然停車しなければならない車としては常識的には考えられない危険な運転である点に徴すると、原告らの主張にそう右証拠は措信することができず、他に右主張を認めるにたる証拠はない。

二、帰責事由

本件事故が常石の事故車運転中の所為に起因すること前示認定のとおりであり、被告が事故車を所有し、常石を雇用していること、本件事故当時同人は被告の業務のために事故車を運転していたことは当事者間に争いがない。そして前示認定事実によれば常石には制限速度を三〇キロメートル超過する高速度で事故車を運転し、さらに進路を左方に変える際は、あらかじめ三〇メートル手前で左転把の合図をしたうえ、左後方の安全を確認する義務があるのにこれを怠り左後続車の有無およびその動静を確認せず、かつ左転把の合図をすると同時に直ちにハンドルを左に切つた過失が認められる。<中略>

(2) 新車登録関係費用および休車損害

<証拠>によれば、原告会社は登録抹消をした被害車の代りに昭和四二年四月五日新車の新規登録手続をなし、その登録手数料として二、〇〇〇円、右新車に装備するタコメーターその他の付属品取付料として五、〇〇〇円、右メーター類の検査費用として三、〇〇〇円の各出費をなし、合計一〇、〇〇〇円の損害を蒙つたことが認められる。

さらに、右証拠によれば、原告会社は営業用自動車一台につき一日に少なくとも二、〇〇〇円の純利益をあげていたこと、および本件事故により被害車を営業車として運行させることができなくなつたため、新車の新規登録をした昭和四二年四月五日までの三一日間営業車一台分の稼動が減少したことが認められる。しかし、他方、右紀太伸介の証言によれば、破損した車を廃車し新車を登録するには通常一週間もあれば可能であるが、本件の場合は被告が被害車の破損状況を確認するのを待つているうちに右期間を経過したものであることが認められ、廃車の廃合は修理をする場合のように必ずしも事前に破損状況の確認を要するものではないから、右休車期間全部が本件事故と相当因果関係あるものとはいい難く、本件事故と相当因果関係ある休車損害は通常必要と考えられる一週間分一四、〇〇〇円と認めるのが相当である。<中略>

(三) 過失相殺

前記一において認定した事実によれば、本件事故の発生については、原告田中が降雨中であるにもかかわらず制限速度四〇キロメートルをはるかに越える時速約七〇キロメートルで進行していたこと、ならびに事故車の進路変更に気がついてからの接触回避のためのブレーキおよびハンドル操作に適切さを欠いたことが、本件事故をして大事に至らせた一因となつていると認めることができる。したがつて、右原告田中の過失は損害賠償額の算定に当つて斟酌すべきであるが、過失相殺の規定を適用するに際しては、使用者たる原告会社に対する関係でも右のような被用者の過失を被害者側の過失とみて斟酌すべきものと解されるから、右原告田中の過失を同原告および原告会社の双方に対する関係で斟酌することとし、前示認定の本件事故の状況、常石の過失の内容等諸般の事情を考慮すると、原告らが被告に対して賠償を求め得べき額は、前示認定の損害額から四割を減じた額とするのが相当である。

(本井巽 笠井昇 伊東武是)

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